骨がある場所に入れることからではなく、被せ物を入れて噛めるようになるところから考える。石上貴之先生が取材で語ったのは、仕上がりのゴールを先に描くインプラント治療でした。東京・表参道の歯科 石上医院では、米国で補綴を学んだ石上先生が、根拠に基づく判断と患者さんとの対話を大切にしています。治療計画の考え方から、ご自身でも模型づくりに取り組む理由、専門医との連携まで伺いました。本記事の Q&A は、取材の文字起こしをもとに、質問・回答の順序と言い回しを読みやすく整理したもので、逐語録ではありません。公式サイトからの補足は、取材回答と分けて記載しています。
「何となく」ではなく、一つひとつに根拠を
診療のなかで、最も大切にしていることは何ですか?
石上先生 やっぱり、根拠のある治療ですね。エビデンスベースドデンティストリーという考え方です。虫歯であれば、その虫歯は今取る必要があるのか。取るならどこまで取って、そのあとをどう直すのか。「何となく治していく」のではなく、「こういう理由だから、ここまでやる」と、一つひとつの判断に根拠を持つことを大事にしています。
患者さんと話す時間も、大切にされているのですね。
石上先生 そうですね。自由診療なので、治療に必要な時間をきちんとかけられますし、コミュニケーションもたっぷり取れます。完全予約制で、そうした時間も大事にしています。
根拠を大切にする環境で、補綴を体系的に学ぶ
米国で補綴を学ぼうと考えた理由を教えてください。
石上先生 勉強する環境が整っていると感じたからです。専門医教育のカリキュラムに一定の基準があり、どの大学でも基本となる部分を学べることに魅力を感じました。根拠を大事にするので、たくさんの情報を取り入れ、勉強します。専門分野を体系的に学べることが、米国を選んだ理由ですね。治療計画 / 診療室と技工室をつなぐ視点
ゴールは、被せ物を入れて噛めるようになること
補綴の視点は、インプラント治療にどのように生きるのでしょうか?
石上先生 補綴は、歯を「補う」ことです。私は、最終的にどんな歯の形にするか、どこで噛み合うようにするかをデザインします。先にゴールが見えているから、そこから逆算して「ここにインプラントを入れよう」と計画できるわけです。骨があるから、そこに入れるという順番ではありません。被せ物を入れて噛めるようになるところがゴールなので、最後まで一貫して、そのゴールを考えられる。補綴を細かなところまで学んできた立場として、そこが自分の強みだと思います。患者さんの満足度について尋ねた際には、細かなところまで取り組んでいると話す一方で、他院と比較していないため、その違いは分からないとも答えていました。比較による評価ではなく、ご自身の診療で何を大切にしているかを、具体的に説明してくださった取材でした。
患者さんを診ている自分が、模型づくりにも関わる
歯の形や噛み合わせを考えるうえで、模型づくりにもご自身で関わっているのですね。
石上先生 はい。自分でできるところは、自分でやっています。患者さんを診ているのは私なので、どういう噛み合わせにしたいか、見た目の面ではどのくらいの歯の大きさにしたいかが分かっています。院内に技工室があり、食事のあとなどにも、そこで模型をつくったりしています。自分でやっていることが多いですね。取材の後半で伺った模型づくりのお話は、最終的な歯の姿から治療を考えるという、前半の説明にもつながっていました。患者さんを診て考えた噛み合わせや歯の大きさを、模型の上でも具体的にしていく。その作業にも、石上先生ご自身が関わっています。
公式サイトからの補足|仮歯で仕上がりを確かめる
同院は、最終的な被せ物の形からインプラントの位置などを検討する考え方を「トップダウン型トリートメント」と紹介しています。また、仮歯で形態・見た目・清掃のしやすさを確認してから、最終的な被せ物の製作へ進むと案内しています。
治療後まで考える / 相談への対応とシステム選び
以前の医院に通えなくなった方の相談も
他院で受けたインプラント治療についての相談もありますか?
石上先生 あります。他院でインプラントを入れたあと、その医院が閉院してしまい、壊れた部分を直したいという方もいらっしゃいます。インプラントにはいろいろなメーカーがありますが、仕組みの基本には共通する部分があります。その構造を踏まえて対応を考えています。当院で新しく使うメーカーとは違うものについても、相談を受けています。編集部補足:相談を受けられることと、すべての状態・製品で修理や再治療ができることは異なります。具体的な対応は、使用されているシステムやお口の状態によって異なります。
メーカー選びは、将来ほかの医院で診るときも考えて
新しく治療をする場合、インプラントのメーカーはどのように選んでいますか?
石上先生 基本的に使っているのは、ジンマーとストローマンです。選ぶときに大事にしているのは、シェアが高く、使っている先生が多いメーカーであることです。珍しいシステムだと、将来ほかの医院へ行ったときに対応が難しくなることもあります。だから、ほかの医院でも分かる先生がいることを考えています。もう一つは、私自身が米国で使っていて、慣れていること。この二つが大きな理由ですね。取材では、メーカーの性能の優劣を訴求するよりも、治療後に別の医院で対応が必要になったときのことと、先生自身の使用経験が、選定理由として語られました。
CT と、必要に応じたサージカルガイド
インプラントの検査や手術では、どのような設備を使っていますか?
石上先生 基本的には一般的な設備です。CT はありますし、サージカルガイドも必要であれば発注して使っています。特別に新しい機器がそろっている、というわけではありません。公式サイトでも、レントゲン・CT・模型による検査を行って治療計画を立て、患者さんの同意を得てから手術の日程を決めると案内しています。機器の名前だけでなく、その前提となる検査と計画の考え方も、同院の取り組みとして紹介されています。
学びと連携 / 専門性を持ち寄って診療する
米国で学んだことを、少人数の対面で伝える
歯科医師向けの勉強会「PPP」は、どのような場ですか?
石上先生 米国で習ってきたことや情報を、歯科医師の先生方と共有するセミナーです。帰国してから始めて、毎年続けています。勤務医の先生や院長先生など、興味を持った方が参加されています。今はオンラインセミナーなども多いですが、私は少人数で、顔を合わせて伝えたいので、対面の形で行っています。
チーム医療は、必要な専門医と役割を分けること
ほかの分野の先生とは、どのような体制で連携していますか?
石上先生 基本的に、常勤は私です。他の分野の専門医による治療が必要であれば、予定を合わせて来てもらって当院で治療することもありますし、患者さんにその先生の医院へ通っていただくこともあります。その治療が終わったら、私の担当する部分は、また当院に戻ってきていただくという形です。海外では専門分野ごとに分担する診療が行われています。日本でもこうした形がもっと広まるとよいなと思って、留学した先生たちと一緒に取り組んでいます。複数の専門医が常に院内にいるという意味ではなく、治療に必要な場面で連携し、来院を依頼したり、他院での治療を組み合わせたりする体制です。石上先生が考えるゴールに向けて、分野ごとに役割を持ち寄っています。
困っていることを、まず共有するところから
どのような方に、相談に来ていただきたいとお考えですか?
石上先生 困っていらっしゃって、当院で治療したいと思ってくださる方であれば、どなたでも、という気持ちです。最終的にどんな歯をつくり、どこで噛み合わせるか。そのゴールに向けて、治療の理由を明確にし、患者さんと話す時間を確保する。模型づくりや専門医との連携のお話からも、診療の一つひとつをご自身の言葉で説明する、石上先生の姿勢が伝わってきました。公式サイトではセカンドオピニオンも案内し、相談したからといって、そのまま同院で治療を受けなければならないわけではないとしています。治療を決める前に、いま困っていることと、どのような歯を目指したいかを共有する。そこから治療の道筋を考えていく医院です。
医院情報/お話を伺った先生
歯科 石上医院|医院情報
- 所在地
- 〒107-0062 東京都港区南青山5丁目14-4
- 電話・アクセス
- 03-3409-6889
東京メトロ「表参道駅」B1出口から徒歩5分 - 診療時間
- 月・火・水・金 10:00〜13:00/14:00〜18:00
土曜 10:00〜13:00 - 休診日
- 木曜・土曜午後・日曜・祝日
- 診療・予約
- 完全予約制・自由診療。問い合わせ・予約は基本的にメールで受付。
診療日の変更や予約方法の詳細は、医院の最新の案内をご確認ください。
お話を伺った先生
石上 貴之 先生
歯科 石上医院 院長/米国補綴専門医
| 年 | 経歴 |
|---|---|
| 2009年 | 東京歯科大学 卒業 |
| 2010年 | 東京歯科大学歯学部附属病院 歯科臨床研修医 修了 |
| 2011年 | 韓国キョンヒ大学歯学部附属病院 補綴科クリニカルリサーチャー 修了 |
| 2016年 | 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 スポーツ医歯学 卒業 |
| 2021年 | 米国南カリフォルニア大学 補綴専門医課程 卒業 |
| 2022年 | 歯科 石上医院 院長 |
受賞歴
Howard Landesman Scholarship(2020年)
所属等(公式サイト表記)
American College of Prosthodontists/American Board of Prosthodontics/日本スポーツ医学会/日本補綴歯科学会
専門医の表記は医院公式プロフィールに基づきます。所属団体の記載と各団体の認定資格は別のものです。本記事で紹介した診療方針や経歴は、個々の治療結果を保証するものではありません。